日進月歩で進化を続ける生成AI (ジェネレーティブAI)。
特にクリエイティブな分野と、生成AIは非常に親和性が高く、様々な活用方法が発見されています。
本記事では、グラフィックデザインや動画編集などのクリエイティブジャンル×生成AIに着目し、生産性や情報共有力を向上させるための使用方法について、解説していきます。
特にクリエイティブ系の仕事をしている方や、外部クライアントとの間で、イメージの齟齬を感じたことがある方は必見の内容です。
順序立てて解説していくので、ぜひ最初から最後までご覧ください!
Part1.グラフィックデザインとは
本題に入る前に、まずは「そもそもグラフィックデザイン」とは、という点について、解説していきます。
一見「いきなり何?」となってしまうのも無理はありませんが、少々お付き合いください。
1-1.グラフィックデザインとは【概要/役割】
「グラフィックデザイン」とは、印刷物やwebページといった平面のメディアを使用し、デザインによって情報やメッセージを伝えることを指します。
例えば、冒頭の画像では
・『第3回Wondershareぬりえコンテスト』
・賞品総額20万円!8/10~9/10
・キャプション
という、主に3つの情報をグラフィックデザイン化した商業デザインの事例です。
訴求したい内容が強調され、単に情報を羅列された場合と比較してユーザーに訴求しやすい内容に仕上がっています。
このように「見やすく」「分かりやすく」情報を伝達する手段としての役割をグラフィックデザインは担っています。
また上記のような「商業デザイン」は、写真や色、テキストを使用し、訴求内容をユーザーへ視覚的に伝える、発信者・ユーザー間におけるコミュニケーション手段です。
そのため、上の画像では各要素を装飾することで情報の整理・強調・伝達を促した上、ユーザーの視線の流れを誘導し、CTA(Commodity Trading Advisor)やキャッシュポイントへと到達させる目的がある点に注目してください。
1-2.グラフィックデザインの重要性
グラフィックデザインの最終的な目的は、単なる周知にとどまらず「ユーザーを何らかの行動に導くこと」です。
そのため、ユーザーに寄り添い、ユーザー目線で行動意欲を促進させるような仕掛けが重要になります。
ユーザーが実際に行動を起こすまでの変化は、以下の3ステップに別けることが可能です。
①認知:SNSなどでイベントの存在を知る
②検討:参加すべきかメリット・コスパ・タイパを吟味
③行動:CTAクリック・スケジューリング、参加に向けての能動的動作
グラフィックデザインは上記3ステップの中でも、特に①の「認知」に該当し、ユーザーに対して視覚的な認知を促すことで行動への窓口になるため、非常に重要な役割を担っていると言えます。
Part2.生成AIの概要と種類
続いて、生成AI(ジェネレーティブAI)の概要とその種類について本章では解説していきます。
2-1.生成AIとは
「生成AI」とは簡単に言えば「ユーザーの指示により画像やテキストを自動で生成するツール」です。
人間の脳の神経回路を模倣した、数学的モデルであるニューラルネットワークでの学習を基に、文章、画像、音声などを生成できます。
主な使用方法として、ユーザーがテキストベースで入力した情報(プロンプト)に基づいてAIが結果を反映させるというものがあります。
2-2.生成AIの種類
2024年現在、生成AIは「画像生成」「動画生成」「テキスト生成」の3種類が主です。
それぞれ代表的なサービスとして
・画像生成AI:Adobe Firefly, Midjourney, Petalica Paint
・動画生成AI:Runway(写真ベース), KaiBer(CGベースのアニメーション), Synthesia(人物アバター生成)
・テキスト生成AI:Jasper, YouChat(実装元は全てOpenAI)
・統合的AIサービス※:Filmora, StableDiffusion, ChatGPT
などが上げられます。
※ 画像生成AI・動画生成AI・テキスト生成AI・音楽生成AIなど複数のAIを統合したサービス
これらの中でも画像やテキスト生成は、数秒から1分前後で成果物が出力されるため、ユーザークリエイティビティの補佐・補完・生産性向上が主な使用用途(2024年現在)となっています。
また、下記の記事では更に詳しく生成AIについて、紹介しています。ぜひこちらも併せてご覧ください。
関連記事:【保存版】生成AIを活用した成功事例分析と無料で使える生成AIおすすめ
Part3. 生成AIのデザイン導入事例から紐解くメリット
この章では、実際に生成AIを導入した事例から、生成AIを使用するメリットについて、紐解いていきます。
ここで紹介するデザインにAIを活用した事例は以下の4つです。それぞれ詳しく見ていきましょう!
AIデザイン事例①Netflix×Wit studio×Production I.G
Youtube限定アニメ「犬と少年(2023年)」(再生回数18万回/10カ月間)において、背景制作にAI生成技術(rinna社)を導入した事例です。
Production I.Gが手掛けたNetflixアニメを学習元に、劇中全41カットをアニメーターとAIによるデザイン・共同作業により制作しています。
この事例からは、アニメ現場の人手不足解消を試み、作業時間短縮と人件費の削減というメリットが紐解けます。
AIデザイン事例②カルビー
カルビーが、クランチポテト(既存商品)のパッケージリニューアル制作にAIを導入した事例です。
590万人の学習データをもとに、AIが商品のパッケージデザインを評価する「パッケージデザインAI(株式会社プラグ)」を使用しています。
商品の特徴と訴求が消費者に受け入れられ、リニューアル前と比較して売上アップを達成しました。(売上数非公開)
具体的には、より「バリバリ感」「堅さ」というコンセプトをイメージしやすいパッケージに、AIを駆使してデザインされています。
この事例からは、AI導入による、作業時間の短縮及びブランディングサポートというメリットが紐解けます。
参照:さらに“最堅”に合う味わいへ!「クランチポテト」が初リニューアルカルビーのポテトチップスで初めてAIを活用したパッケージデザイン-Calbee
AIデザイン事例③キリンビバレッジ
POPデザイン制作とそれに連動したパッケージデザインをAIを活用して施行(PXC inc アイポプ)した事例です。
全国の店舗で一貫したクオリティを確保したPOPデザインは高く評価され、統一感ある販促展開を達成しました。
AI導入によって効果的なデザイン及びセールスプロモーションが実現できると証明した事例と言えるでしょう。
参照:「アセスメントAI」の試験運用を開始 - キリンホールディングス
AIデザイン事例④江戸の火事の様子
「江戸の火事の様子」の線画に、自動着色ツールである「Petalica Paint(PFN社)」を使用。
白黒PNG画像を30秒ほどで着色済み画像を生成した事例です。
非常に自然で違和感のない仕上がりですが、人間の手で着色する場合は、到底30秒におさまらないでしょう。
AIによるデザイン・作業時間の短縮というメリットが強調される事例です。
Part4.「クリエイティブ×AI」の課題点
「生成AI」とデザインを代表とする「クリエイティブ領域」のかけ算は非常に便利であり、2024年現在、既に多くの企業がブランディングやマーケティングに導入していることがご理解いただけたのではないでしょうか。
しかし、一方で現状課題もまだまだ残っています。
この章では「クリエイティブ×AI」の課題点について、紹介します。
4-1.「クリエイティブ×AI」4つの課題点
生成AIとクリエイティブ領域の掛け合わせにおける課題は以下の4点です。それぞれ更に詳しく見ていきましょう。
①品質にばらつきがある
AIで生成されるデザインなどの成果物は、人の目には不自然に映る結果がアウトプットされることがよくあります。
「指の造形が崩れる」というようなエラーは画像生成AIにおいて、有名ですね。
ある程度は、細かく設定し修正していくことで改善できますが、時間と技術が必要になるため、生成AIを活用するメリットが薄れてしまいます。
②細やかな修正に対応できない
細かい修正にうまく対応できない点も今後の課題です。
例えば、クライアントワークにおいて、フィードバックの意向を汲んだ上で修正していく工程は欠かせませんが、AIによるデザイン修正は意図がうまく反映されない場合も多く、困難を極めます。
③著作権問題がグレー
意図せず著作権を侵してしまうリスクを内包しています。
理由として、著作権を含む画像が学習元に含まれている場合があり、プロンプトによっては、出力に大きく影響が出てしまうことがあるためです。
本質的な解決には、学習で使用するデータの選別が欠かせませんが、著作権フリーのデータだけであらゆるデザイン・画像が生成できるようにする為には、自前のデータを大量に保有している必要があるため、多くのサービスにとっては困難でしょう。
④抽象的なニュアンスに対応できない
人間同士の言語かしづらい共通認識や「なんとなく~のような」という抽象的ニュアンスへの対応ができない点も課題です。
また、文化圏ごとに異なる共通認識や、固有名詞、デザインの特性は各所に点在しているため、学習データがどうしても不足してしまいがちです。
例えば「招き猫」を知らないAIに、プロンプトで指示を出して細かいニュアンスを伝えるのは非常に難しく、再現がままなりません。
4-2.AIはクリエイターの仕事を奪うのか
クリエイティブ領域で仕事をしている方にとって「AIはクリエイターの仕事を奪うのか」という、トピックは気になる方も多いのではないでしょうか?
結論として「100%奪うことは出来ない」でしょう。
基本的なデッサン力不足や、人間同士の細やかなニュアンスの調整に対応していないなど、課題がまだまだあるため、現状では、AIはクリエイターのサポートや作業補完を担うにとどまります。
ただし今後、新しい職種が誕生する可能性は考慮に値します。
クライアントの複雑な要望に応えるため、プロンプトの細分化・AIに指示出しする為の論理的言語力が必要になることから、例えばAIのオペレーティング職が増える、またはデザイナーがそれを兼任するというような状態も想定されるでしょう。
Part5.AI生成の新たな活用方法
以上を踏まえて、この章では本記事の結論として、ビジュアル共有を例に、新たなAI生成の活用方法を紹介していきます。
その方法とは、認識の共有に、AIデザインを活用する方法です。
例えば、イメージの伝達は、言語だけでは難しいのは先述の通りです。
そこで、AI生成した、簡易的なAIデザインを提示することで、齟齬無くスムーズな情報伝達が視覚的に共有できるでしょう。
特に、PRビジュアルや販促物制作、ブランディングにおいてグラフィックの方向性を統一的に認識する上で、この活用方法は役立つはずです。
また、依頼者側からの活用だけでなく、受注者側からいくつかの簡易的なAIデザインを共有し、依頼者側が選択することでも活用できるでしょう。
この活用方法は、低コスト・短時間で、スムーズなイメージ共有ができるため、外注との関係だけでなく、社内部署間のイメージ共有など、あらゆるクリエイティブシーンで役立てられるでしょう。
まとめ:生成AIを活用することでクライアントとの齟齬は解消できる!
本記事では、クリエイティブ分野におけるAIの活用法として、ジェネレーティブAIを活用した、ハイコストパフォーマンスなイメージ共有方法を解説しました。
ビジュアルイメージなど、AIによって生成したデザインをうまく活用することで、言葉では伝えきれない雰囲気や、ニュアンスのズレをなるべく軽減し、齟齬無く仕事が進められるはずです。
特に、海外企業など文化圏が異なる場合は“ズレ”が発生しやすいため、非常に有効な手段であると言えるでしょう。
ぜひ、クライアントワークや、社内連絡に取り入れてみてはいかがでしょうか?
役に立ちましたか?コメントしましょう!