近年、AI(人工知能)のビジネス活用が急速に進んでいます。
AIを活用することで、業務の効率化や新たな価値の創出が可能になり、大幅な業務改善が見込めるでしょう。
しかし、AIの開発や運用には、専門的な知識やスキルが必要となるため、多くの企業にとってハードルになっています。
そこで登場したのが、本記事のテーマである「Vertex AI」です。
「Vertex AI」は、Googleが開発したAI 開発を効率的かつ効果的に進めるための強力なツールです。Vertex AI を利用することで、誰でも簡単に AI モデルを構築・運用できるようになり、AI のビジネス活用を成功させられます。
本記事では、Vertex AI の概要や特徴、使用メリット、料金、活用シーンまで、網羅的に解説していきます。Vertex AI を活用して、AI のビジネス活用を成功させましょう!
目次
Part1.Vertex AIとは?
「Vertex AI」は、GoogleのGoogle Cloudが提供するフルマネージドの機械学習プラットフォームです。
従来の機械学習モデル構築では、データ収集、処理、トレーニング、デプロイ、管理などの工程を個別に実行する必要があり、互換性の問題や煩雑な作業により、時間とコストの無駄が発生していました。
しかし、Vertex AIを活用することで、機械学習モデルの構築を一気通貫で進められるため、作業負荷を大幅に削減でき、大規模なAIも効率的に開発できます。
さらに、Vertex AIを通じて、マルチモーダルAIである「Gemini」や軽量かつオープンなAIモデル「Gemma」などをはじめ、様々なAIモデルに簡単にアクセスできます。
参考記事:「Vertex AI」の生成AI向け機能を強化、「AIを作る」発表まとめ
Part2.Vertex AIでできること一覧
Vertex AIは、構築からデプロイまで機械学習モデル開発のサイクルを包括できるフルマネージド機械学習プラットフォームです。
先述の通り、データ前処理、モデルトレーニング、モデルデプロイ、モデル監視など、機械学習モデル開発に必要な機能を網羅しており、専門知識やスキルがなくても、簡単にAIモデルを構築・運用できます。
具体的にできることの一例をここで詳しく見ていきましょう!
1. データ前処理
機械学習モデルの精度を高めるためには、データの前処理が非常に重要です。Vertex AIは、以下のデータ前処理機能を提供します。
・特徴量エンジニアリング: データから新たな特徴量を作成することで、モデルの学習精度を向上
・データ分割: データを訓練データ、検証データ、テストデータに分割することで、モデルの過学習を防止
これらの機能を自動化することで、データ準備にかかる時間を短縮し、効率的に機械学習モデルが構築できます。
2. モデルトレーニング
Vertex AIは、様々な機械学習アルゴリズムをサポートしており「ハイパーパラメータチューニング機能」により、モデル精度を向上させられます。
・ハイパーパラメータチューニング: モデルのパフォーマンスを自動的に調整することで、最適なモデルを発見
・スケーラブルなトレーニング: 大規模なデータセットのトレーニングにも対応できる、スケーラブルなトレーニング環境を提供
これらの機能により、高精度な機械学習モデルを効率的にトレーニングできます。
3. モデルデプロイ
Vertex AIは、モデルを本番環境にデプロイし、簡単に運用・管理できます。
・モデル管理: デプロイされたモデルを簡単に管理し、バージョン管理やロールバックが可能
・リアルタイム推論: モデルをリアルタイムで推論し、アプリケーションに組み込み
4. モデル監視
Vertex AIは、モデルのパフォーマンスを監視し、必要に応じて再トレーニング実施できます。
・アラート機能: モデルに問題が発生した場合にアラートを通知
・再トレーニング: モデルのパフォーマンスが低下した場合に、再トレーニングを実施
これらの機能により、機械学習モデルを常に最新の状態に保ち、高いパフォーマンスが維持できます。
5. その他の機能
Vertex AIは、上記以外にも例えば以下の機能を提供しています。
・AutoML: 専門知識がなくても、簡単に機械学習モデルを構築できる機能
・Vertex AI SDK: Python、Java、Goなどのプログラミング言語からVertex AIを利用するためのSDKを提供
これらのことから「Vertex AI」が、多くのツールを要した従来の方法を一新し、大規模AI開発も効率的に進められる画期的なサービスであるとわかりますね!
以下の記事では「できること」と、対応する機能について更に詳しくまとめてくれているので、深掘りしたい方はこちらもぜひご覧ください。
参考記事:Google CloudのAI/ML開発プラットフォームVertex AIは結局何ができるのか|DevelopersIO
Part3.Vertex AIの特徴とメリット
続いて、従来のAIプラットフォームやサービスと比較して、Vertex AIの特徴やメリットはどのような点なのか、それぞれここで見ていきましょう。
3-1.Vertex AIの特徴
Vertex AIは、以下の特徴を持つプラットフォームです。
特徴1.フルマネージド
特徴2.スケーラブル
特徴3.セキュア
特徴4.オープン
それぞれのキーワードと供に、詳細やユーザーの得られるメリットを見ていきましょう!
特徴1フルマネージド
Vertex AIは「フルマネージド」という特徴を持ちます。
プラットフォームの管理やメンテナンスは、OS のパッチ適用、セキュリティ対策、スケーリングなど全てを Google Cloud が代行するため、ユーザーは機械学習モデル開発に集中できるでしょう。
特徴2スケーラブル
Vertex AIは大規模なデータセットの処理や、多数のモデルのデプロイにも対応でき、処理できるデータ量やデプロイできるモデル数において、スケーラブルなプラットフォームであると言えます。
モデルの規模が拡大しても、パフォーマンスが維持できるため、ビジネスの成長に柔軟に対応できるでしょう。
特徴3セキュア
データ暗号化、アクセス制御(ロールベースアクセス制御、IP アドレス制限など)、監査ログなどの機能により、データとモデルのセキュリティを確保します。
ユーザーは安心して機械学習プロジェクトを進められるでしょう。
特徴4オープン
オープンソースの機械学習フレームワークである「TensorFlow」や「PyTorch」をはじめ「Keras」「MXNet」など、幅広いフレームワークをサポートしているため、ユーザーは柔軟にモデルを構築できます。
3-2.Vertex AIのメリット
Vertex AIを利用することで、以下のメリットが得られます。
メリット1.開発効率の向上
メリット2.コスト削減
メリット3.精度の向上
メリット4.迅速なデプロイ
メリット5.継続的な改善
それぞれ根拠と供に詳しく見ていきましょう。
メリット1開発効率の向上
Vertex AIを活用することで開発効率の向上が見込めます。
データ収集、データ前処理、特徴量エンジニアリング、ハイパーパラメータチューニングなどのタスクを自動化することで、大幅な開発効率の向上が可能です。
メリット2コスト削減
Vertex AIの活用は全体的なコスト削減にも繋がるでしょう。
プラットフォームの管理やメンテナンスにかかるコストを削減し、TCO(Total Cost of Ownership)が低減できます。
メリット3精度の向上
Vertex AIを活用することで、機械学習モデルの制度を向上できます。
ハイパーパラメータチューニング機能と、精度検証、バイアス検出、ドリフト検知などの機能を備えたモデル評価ツールにより、モデル精度を向上させられます。
メリット4迅速なデプロイ
Vertex AI は、ワンクリックデプロイ機能に加え、例えば以下の機能により、モデルを迅速かつ簡単に本番環境にデプロイできます。
・カナリアデプロイ: 本番環境にデプロイする前に、小規模な環境でモデルをテストできる
・ A/B テスト: 複数のモデルを比較して、より効果的なモデルを選定できる
これらを活用することで、開発から本番までのリードタイムを短縮し、迅速にビジネス活用が図れるでしょう。
また、カナリアデプロイやA/Bテストを活用すれば、本番環境前にモデルの検証ができ、リスクが低減できます。
メリット5継続的な改善
Vertex AI は、モデルモニタリング、アラート機能、再トレーニング機能などの機能により、デプロイしたモデルのパフォーマンスを常に最新の状態に保ち、継続的に高いパフォーマンスが維持できます。
Part4.Vertex AIの料金
Vertex AIの料金体系は、利用するサービスや機能によって異なりますが、基本的には従量課金制です。
また、時間に対する従量課金や、実行数、使用料による従量課金といったように、使用モデルと用途によって、単位も変動します。
料金に関しては、以下の3点が重要です。
・利用する機能によって料金プランが異なる
・使用量に応じて課金される従量課金制
・クリティカルに最小限のモデル使用に留めることで節約できる
なお、実際の課金内容は利用状況によって異なります。
また、課金対象項目と単位は、予告なく変更される可能性があります。
詳細については下記公式ページから、使用しようと考えているモデルや成果物の箇所をご覧ください。
参考:
Vertex AI の料金|Google Cloud
Vertex AI における生成 AI の料金|Google Cloud
Part5.Vertex AIの活用事例3選
本章ではVertex AIを実際に活用して革新的な成果を挙げた事例について、3つのジャンルから紹介します。
事例1.製造業:GM Cruiseの自動運転技術を支える高速モデル開発
2013年以来都市部での自動運転に取り組んでいる「GM Cruise」は、Google Cloud上のVertex AIを活用して、以下の自動運転車開発における課題を解決しています。
・自動運転に必要な高精度な機械学習モデルを迅速に開発・訓練する
・開発サイクルを短縮し、迅速なイテレーションを実現する
Vertex AIを活用した具体的なことで得られた具体的な成果は以下の通りです。
・動的ML Brainの構築: Vertex AIを活用した動的ML Brainにより、収集されたデータから同時進行で自動的に新しいモデルを訓練し、効率的に古いモデルよりも優れたパフォーマンスが達成できるようになりました。
・シミュレーションとテストの強化: Vertex AIを活用したシミュレーションとテスト(Road-to-Sim)により、車道や歩行者のタイプ、天候などあらゆるシーンに対応したイベントをシミュレートし、自動運転車の安全性が検証できます。
事例2.旅行業:Priceline社の旅行・ホテル予約体験を高度化するレコメンデーションシステム
オンライン旅行代理店「Priceline」は、Vertex AIをビジネス全体に導入しました。
具体的な取り組みは以下の通りです。
★顧客向け:
・パーソナライズされたホテル予約: 顧客の希望に合ったホテルをレコメンド提案
・ジェネレーティブAIを活用したマーケティングプラットフォーム: 顧客向けにマーケティングコピーと画像を自動生成
★従業員向け:
・内部情報検索機能の強化: 必要な情報やリソースへのアクセスを容易に
上記の取り組みから、顧客にパーソナライズされたサービスとシームレスな予約体験を提供、従業員の生産性向上に成功しています。
参考:Priceline Charts Businesswide Generative AI Deployments with Google Cloud|priceline press center
事例3. EC:メルカリの類似商品検索API開発
国内ベンチャーの雄「メルカリ」には、膨大な数の商品が出品されており、ユーザーは目的の商品を見つけるために多くの時間と労力を費やしていました。
そこで、ユーザーの検索体験を向上させるために、Vertex AI Matching Engineによる類似商品検索APIが開発されました。
結果として、購入検討者の検索体験の向上や、購買促進などの向上に成功しています。
参考:Vertex AI Matching Engineをつかった類似商品検索APIの開発|mercari engineering
Part6.AIは「動画編集」にも活用されている
ここまで、Google Cloudで提供されているAI 開発プラットフォーム「Vertex AI」について解説してきました。
最後に本章では、動画編集にもAIが活用されているというテーマで、ソフトとそのAI機能を解説していきます。
6-1.Filmoraの概要
「Filmora」は、豊富なAI機能が搭載されている動画編集ソフトです。現在、動画編集ソフトは様々な企業が発表していますが、中でもAI機能の充実度で言えば「Filmora」が最も高いと言っても過言ではありません。
Filmoraのおもな特徴は以下の6点です。
・シンプルなUIと直感的な操作感
・動画編集を大幅に効率化できる高度な機能を多数搭載
・マルチプラットフォーム対応でPC/スマホ/タブレット/ブラウザから使用可能
・専用オンラインクラウドストレージ「Wondershare Drive」が便利
・素材探しの必要無し!1000万点以上の素材/エフェクト/BGMなど
搭載されているAI機能については後ほど紹介しますが、通常の動画編集機能についてもプロの動画編集者が満足できる仕上がりになっています。
なおかつ、動画編集初心者の方でも、導入したその日から使いこなせるほど直感的な操作感が両立されており、幅広いユーザーから支持されています。
マルチプラットフォーム対応で、自宅PCだけでなく、スマホやブラウザ、タブレットからも専用オンラインクラウドストレージ「Wondershare Drive」を通じて同一編集ファイルの編集ができる点も魅力でしょう。
また、ストックサービスとの連携や、大量の搭載素材/エフェクト、AI生成機能も活用すれば、動画編集時に面倒な素材探しは一切必要ありません!
6-2.Filmoraに搭載されているAI機能一覧
Filmoraに搭載されている主なAI機能は以下の通りです。
機能名 | 概要 |
AI 動画生成 | 指示・台本を記入すれば動画がAI生成 |
AI テキストベース編集 | 動画内の音声をAI認識し、テキストベースの編集が可能 |
AI 音楽ジェネレーター | ロイヤリティフリー音楽がFilmora内で“新たに”AI生成可能 |
AI ボーカルリムーバー | ワンクリックで音楽からボーカルとBGMを高精度分離 |
AI 翻訳 | 動画内の音声をAIが翻訳、ナレーション+字幕を自動生成 |
AI サムネイルデディター | 視聴者の目を引くSNS・動画共有プラットフォーム用サムネイルを動画ハイライトからAI生成 |
AI画像生成 | プロンプトから画像をFilmora内で新たに生成 |
AI スマートマスク | オブジェクトマスキングがワンクリックで実現 |
AI コピーライティング | 搭載しているChatGPTに壁打ち相手や概要欄などの相談・作成が可能 |
AI フレーム補間 | 不足フレームをAIが補間することで、スムーズな動画を実現 |
AI スマートカットアウト | 簡単な指定だけで被写体を切り抜ける機能 |
オートリフレーム | 動画を各プラットフォーム推奨サイズにAI切り抜き |
自動字幕起こし | 動画内の音声を自動文字起こしし、字幕テロップ化 |
上記はFilmoraに搭載されたAI機能の“一部”ですが、これだけのAI機能が1サービス、それも動画編集に格納されているのは驚きですね。
旧来の動画編集は編集者のスキルが問われましたが、現代の動画編集はいかにAI機能を活用して、効率的に編集が進められるかという局面に移行しています。
更に詳しい解説や個別ページは以下の記事でまとめています。深掘りしたい方はぜひこちらも併せてご覧ください。
まとめ:Vertex AI を活用してビジネスを加速させよう!
本記事では、Vertex AI について、その概要や特徴、メリット、料金、活用シーンなどを徹底解説しました。
Vertex AI はGoogleが開発した、AI 開発を効率的に進めるための強力なツールであり、豊富な機能と柔軟性で誰でも簡単に AI モデルを構築・運用して、ビジネスを加速させられます。
AIに馴染みのない方には理解しづらいサービスですが、本記事をしっかり読み込んでいただいた事で、具体的なイメージができたのではないでしょうか?ぜひ本記事を参考に、Vertex AIを活用して、AIのビジネス活用を成功させましょう!
また、最後に紹介したFilmoraもAIを活用して大幅に動画編集を加速させる便利なツールです。無料でも全ての機能が使用できるので、興味のある方はぜひVertex AIとともに導入して、クリエイティブジャンルで活用してくださいね!
役に立ちましたか?コメントしましょう!