録音したオーディオを聴いたとき「音質が悪い……」「音がこもって聞こえる……」「ノイズが気になる……」と気になったことはありませんか? せっかく録った音声がイマイチだと、とてもがっかりしてしまいますよね。そんな悩みは、「サンプリングレート」を理解することで解決できるかもしれません。この記事では音質を大きく左右する「サンプリングレート」について、ゼロからわかりやすく解説します。
Filmora-Google Veo 3 AI 動画生成機能で作られた動画
目次
サンプリングレートとは? 音声をデジタル化する仕組み
まず、「サンプリングレート」という言葉になじみのない方に向け、その意味を簡単にまとめます。これは、アナログの「音」をデジタルデータとして扱うときに使われる考え方です。
基本の考え方:アナログ波形を“標本化”して記録する
「音波」という言葉がある通り、あらゆる音は「波」として伝わり、人の耳に届きます。たとえば音を表す画像として、下図のようなものを見たことはありませんか?

実はこうした音の波は、そのままコンピュータで扱うことができません。コンピュータが扱えるデータは、突き詰めていえば独立した数値の集まり。なめらかに連続している波をコンピュータが扱えるようにするには、波を細かく区切ってやる必要があるのです。
このように、連続したものを区切ってデータ化することを、「標本化(サンプリング)」といいます。
標本化(サンプリング)は坂道を階段にするイメージ
サンプリングがどのように行われるのか、順を追って見ていきましょう。

元データとサンプリングされたデータを並べると、下図のようになります。

サンプリング後のデータ(右側・赤線)は、大まかに元データの形を保ちながらも、高さが階段状にとびとびになっています。
なお実際には、計測値の端数を丸める「量子化」や、数値を2進数に変換する「符号化」という処理も行われているのですが、ここでは説明を省略します。
サンプリングレートとは、標本化する間隔の細かさ
さて、サンプリング前・サンプリング後のデータを見比べてみて、「こんなに形が変わっても、音は同じように聞こえるの?」という疑問が浮かんできませんか? 上図のようにサンプリングの間隔が広いと、音の聞こえ方は変わります。「ン〜〜〜」というなめらかなハミングが「ンンンンン」という途切れ途切れの音に感じられたりするかもしれません。
もっと自然な音を再現するには、階段を元の波に近づける、つまりより多くのサンプリングを行って、段差をより小さくしていく必要があります。ここで出てくる考え方が「サンプリングレート」です。
サンプリングレートとは、「1秒間に何回サンプリングを行うか」を示す値。これが高ければ高いほど、元の音源に忠実なサンプリングができ、なめらかな聴き心地が生まれます。下の図は、サンプリングレートが低い場合と高い場合の比較です。サンプリングレートが高い方は段差が小さく、元の波形に近いことがわかりますね。

音楽CDのサンプリングレートは「44.1kHz」、つまり1秒間に44,100回のサンプリングを行います。これは、ヒトの可聴域である20Hz~20kHzの音を十分カバーできるサンプリングレートだとされています。
サンプリングレートの規格一覧
ここで、広く使われているサンプリングレート規格をご紹介します。動画・オーディオ編集の目的に応じた適切なサンプリングレートを選ぶための参考にしてください。
主な用途 | 特徴 | |
44.1kHz | CD、MD | 人間の可聴域を、問題なくカバーできる。オーディオデータで広く使われている |
48kHz | DVD、Bru-ray、デジタルケーブルテレビ、YouTube | DVD、番組、ストリーミングサービスなど、映像を含む動画データで広く使われている |
96kHz | DVD、Blu-ray | いわゆるハイレゾオーディオ。48kHzよりさらに高品質でゆがみのない音を提供する |
192kHz | 編集プロジェクト | 元の音を最大限忠実に録音したいときに使われるサンプリングレート |
なお、電話や音声認識など、人の話し声だけを想定しているケースでは、8kHz、16kHzなど、より低いサンプリングレートも使われます。
Wondershare Filmoraは、音楽や声に同期して動く「オーディオスペクトラム」を簡単に作成できる動画編集ソフトです。本動画では、この機能の基本的な使い方とMV/歌詞動画への活用例をわかりやすく解説しています:
Filmoraでできること
- 音に合わせて波形アニメーション(オーディオスペクトラム)を自動生成。
- MV/歌詞動画での活用例を3パターン紹介(実演)。
- 基本操作の手順を画面上で解説(使い方チュートリアル)。
- Windows/MacのFilmoraで利用可能。
疑問を解決!サンプリングレートは高ければ高いほどいい?
サンプリングレートの意味や規格がわかったところで、2つの相反する考えが生まれてきます。
1つめは「サンプリングレートは、人間の可聴域をカバーできる44.1kHzさえあれば十分なのでは?」というもの。もう1つは「元の音源に忠実なデータが得られるよう、できる限り高いサンプリングレートを選ぶべきでは?」というもの。
ここでは、高サンプリングレートのメリット・デメリットをもとに、最適なサンプリングレートについて考えていきましょう。
高サンプリングレートのメリットは、“編集のしやすさ”と“ノイズの低減”

高いサンプリングレートを選ぶメリットとしてまず挙げられるのが、編集のしやすさです。
元の音声に忠実な波形が保たれるため、ピッチやゲイン(音量)の上げ下げをしても、音質の低下を防げます。さらにエフェクトをかけても、意図しない音質の変化が起こりにくくなります。
さらに、高音域でもノイズ、歪みが発生しにくい点もメリットです。たとえばサンプリングレート44.1kHzの場合、モスキート音のような高音ではサンプリング性能の限界に近づいてしまい、オーディオにノイズが出ることがあります。サンプリングレートが高ければ、高音も難なくとらえられるため、そうしたノイズを防ぐことができます。
デメリットは、データサイズと処理時間の増加。見合う効果を得られないおそれも大

対して、通常の動画制作のケースなら、192kHzのような極端に高いサンプリングレートは必要ないといえます。
ここまで何度か触れてきたように、ヒトが聴くならサンプリングレートは48kHzで十分。サンプリングレート192kHzにすると、データサイズは約4倍になり、編集ソフトでの処理時間も長引く一方、ヒトの耳ではほとんど違いがわからないでしょう。
また、多くの動画プラットフォームや再生機器は192kHzに対応していません。せっかく高サンプリングレートの音声データを作ったとしても、再生時には48kHzに変換されてしまいます。動画をどこで発表するのか、どう使うのかを考えて、ムダのないサンプリングレートを選ぶことが重要です。
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マイクのサンプリングレート完全ガイド|選び方と設定方法
忠実なサンプリングには、よいマイクと適切な設定が欠かせません。必要なサンプリングレートを得るにはどんなマイクを選び、どんな設定をすればよいのか、ていねいに解説します。
マイクを選ぶときは「周波数特性(F特)」をチェック!」

マイク選びで見るべき箇所はいくつかありますが、ここではサンプリングレートに絞って解説します。製品仕様や紹介文に「〇kHz対応」「サンプルレート:〇kHz」と書いてあればわかりやすいのですが、そうした記載が見当たらないものもあります。
そんなときには「周波数特性(F特)」をチェックしてみましょう。これは、マイクがどの周波数帯の入力に対応しているかを示す値です。詳しい説明は省きますが、サンプリングレートの1/2の値が、デジタルで正しく表現できる周波数の最大値です。
つまり48kHzのサンプリングレートでオーディオを扱いたい場合は、周波数特性の最大値が「24kHz」を超えないようにします。多くのマイクは、ヒトの可聴域に合わせた「20Hz〜20kHz」の周波数特性を持ち、サンプリングレート48kHzで過不足なく動作しますが、想定される用途によって差があることも。イメージ通りの音が得られるよう、忘れずにチェックしましょう。
Mac でサンプリングレートを変更する具体的手順
マイクからの入力を適切なサンプリングレートで受け取るには、パソコン側での設定も必要です。ここでは、Macでサンプリングレートを設定する手順を、画像付きで紹介します。


これでサンプリングレートの設定は完了です。ふだん使っているスピーカーやマイクのサンプリングレートを知りたい、変更してみたいという方は、ぜひお試しください。
関係記事: YouTuberやVlogerにおすすめの集音マイク5選!編集方法まで徹底解説
オーディオインターフェイスこそ重要! その役割と製品比較
ボイスや音楽を録音する機会が多いなら、見逃してはいけないのがオーディオインターフェイス。コンピュータとマイク・楽器・再生機器などをつなぐデバイスです。オーディオの処理に特化しているため、ノイズが少ない高品質な音声を扱いたいときには欠かせません。
また、パソコンの入出力端子が足りないときにはそれを補ってくれるほか、製品によっては音声にエコー・リバーブなどのエフェクトをかける機能も備えています。
AD/DA変換の要。オーディオインターフェイスが最終的な音質を決める

オーディオインターフェイスの主な仕事は、楽器や声といったアナログな音をデジタル信号に変換すること(AD変換)、そしてデジタル信号を音に変換して出力すること(DA変換)。この記事のテーマである「サンプリングレート」は、まさにAD変換に直結する数値です。オーディオインターフェイスを使うなら、必要なサンプリングレートをサポートしているかどうかのチェックは不可欠です。
さまざまなメーカーから数多くのオーディオインターフェイスが販売されていますが、今回は特にシェアの高い3メーカーの中から、初心者向けモデルを選び、主な特徴や端子数、対応サンプリングレートを比較します。
メーカー | Focusrite(フォーカスライト) | Universal Audio | MOTU |
モデル名 | Scarlett 2i2 | VOLT 276 USB Recording Studio | M2 |
対応サンプリングレート | 44.1kHz48kHz88.2kHz96kHz176.4kHz192kHz | 44.1kHz48kHz88.2kHz96kHz176.4kHz192kHz | 44.1kHz48kHz88.2kHz96kHz176.4kHz192kHz |
主な特徴 | 2024年 Sound On Soundで「最優秀オーディオインターフェース賞」を受賞120dBのダイナミックレンジオートゲイン機能搭載 | 50年以上にわたる歴史を持つ老舗メーカー温かみのある豊かなサウンド表現が可能iPad、iPhoneとも接続可能 | コストパフォーマンスに優れる出力フルカラーLCD搭載で入力レベルが一目でわかる遅延のない入力速度 |
上の表から、現在定評のあるオーディオインターフェイスは、初心者向けであっても44.1kHzから192kHzまでの幅広いサンプリングレートに対応しているといえます。これらのモデルであれば、ポッドキャスト配信、ソロ演奏、歌ってみた動画、ASMRなどの制作を高音質でサポートしてくれるでしょう。
目的別・最適なサンプリングレート選択ガイド
ここからは、具体的な動画の種類に応じたサンプリングレートを紹介します。低すぎるサンプリングレートは聞き応えを損ねてしまいますし、高すぎるサンプリングレートはストレージを圧迫する上に処理速度の低下を招いてしまいます。作りたいものに合わせて、適切なサンプリングレートを選んでくださいね。
YouTube・配信(48kHz):互換性と品質のバランスが最適

YouTubeをはじめとする各種配信プラットフォームでは、48kHzが標準サンプリングレートとして定められています。ヒトの可聴域をしっかりカバーしてくれて、データサイズも手頃に抑えられます。
Vlog、ライブ配信、解説系動画など、ほとんどのケースでは48kHzが、バランスの取れた最適な選択肢だといえるでしょう。
関係記事: OBS Studioで高画質なYouTube配信をするには?設定方法を詳しく解説!
音楽制作・ASMR(96kHz):微細なニュアンスを残し、満足感を向上

特に音に着目してほしい演奏動画、ASMR動画では、よりきめ細かく高い周波数まで表現できる96kHzがおすすめです。48kHzよりもさらにノイズを抑えた、クリアで快適な音声を視聴者に届けられるでしょう。
プロ録音(192kHz):マスタリングや大掛かりな編集にも対応

ヒトの聴覚の特性上、192kHzのサンプリングレートが必要になるケースはあまり多くありません。ただし、本格的なスタジオ収録を行い、大規模なミックスや加工を行いたい場合、音源の劣化をできる限り抑えたい場合などでは、サンプリングレート192kHzが選ばれるかもしれません。また、人間の可聴域を超える「超音波」を記録するなどの学術・研究目的で使われることもあります。
音声・動画編集ソフトは必要なサンプリングレートに対応している? 使いやすさも徹底比較
マイク・オーディオインターフェースと順に見てきたところで、動画編集ソフトに移りましょう。もちろん動画編集ソフトも希望するサンプリングレートに対応している必要があります。
ここでは主要な動画編集ソフト「Filmora」、「Premiere Pro」、「DaVinci Resolve」、「Final Cut Pro」を対象に、対応サンプリングレートや使いやすさといった観点から比較していきます。
ソフト名 | Filmora | Premiere Pro | DaVinci Resolve | Final Cut Pro |
対応サンプリングレート | 44100 Hz48000 Hz | 8000 Hz11025 Hz22050 Hz32000 Hz44100Hz48000Hz96000Hz | 44100 Hz48000 Hz96000 Hz(有償版のみ)192000 Hz(有償版のみ) | 8000 Hz11025 Hz12000 Hz16000 Hz22050 Hz24000 Hz32000 Hz44100 Hz48000 Hz64000 Hz88200 Hz96000 Hz192000 Hz |
直感的なUI | ◎ | ◯ | △ | ◯ |
編集の自由度 | ◎ | ◎ | ◯ | △ |
編集ソフトによって、対応サンプリングレートにはかなり違いがあることがわかります。しかし重要なのは、ヒトの耳で快適に聞こえ、多くのプラットフォームで採用されている「44100Hz」、「48000Hz」をスムーズに使えること。
特に個人のクリエイターであれば、多様なサンプリングレートに対応しているよりも、主要なサンプリングレートを手間なく使え、豊富な機能を直感的に使えるほうが動画づくりには役立つでしょう。その点で、Filmoraは必要なサンプリングレートを押さえながらも、使いやすさと編集の自由度を両立している、クリエイター目線のソフトだといえそうです。
Filmoraの強み:プロ仕様の48kHzが標準設定、サンプリングレートの変更もカンタン
ここで、Filmoraでサンプリングレートを変更する方法を2つご紹介します。1つ目は、「プロジェクト設定」から変更する方法。もう1つは書き出し時にサンプリングレートを指定する方法。どちらもクリックだけの簡単操作です。
「プロジェクト設定」からサンプリングレートを変更
1. メニューバーの「ファイル」>「プロジェクト設定」を順に選択します。

2. 「サンプルレート」から、希望のサンプリングレートを選択します。
その後「OK」をクリックすれば、設定は完了です!

書き出し時にサンプリングレートを指定
1. 動画編集の完了後、ウィンドウ右上の「エクスポート」をクリックします。

2. 表示されたウィンドウから「プリセット」内の「詳細設定」を選びます。

3. 「オーディオ」内の「サンプルレート」から、好みのサンプリングレートを選択します。
「適用」または「プリセットとして保存」をクリックすれば、設定は完了です!

よくある質問
Q: 192kHz録音と48kHz録音の違いは、聞いて分かるものですか?
正確なところは聴く人のコンディションや再生機器、周囲の環境、聴く楽曲にもよりますが、192kHzと48kHzとの違いはヒトの可聴域を超えたところにあるため、はっきりと違いを聴き取るのは難しいと考えられます。
ちなみに、イヌやネコなど多くの動物は、ヒトよりも広い可聴域をもっています。どうしても違いを実感したい場合は、ペットに(負担にならない範囲で)聴き比べてもらい、反応を探ってみるのも良い手かもしれません。
Q: マイクが192kHz非対応のときはどうすればよいですか?
通常の動画制作であれば、サンプリングレートは44.1kHz、もしくは48kHzあればじゅうぶんなので、マイクが192kHzに対応していなくても問題ないといえます。
ただし、どうしても192kHzのサンプリングレートが必要という場合は、「サンプリングレートコンバータ」という機器を使って、低いサンプリングレートを引き上げることができます。この場合、音質に影響をおよぼす可能性もありますので、使用時にはバックアップをとり、元音源と慎重に聴き比べるなど、十分に気をつけましょう。
Q: オーディオインターフェイスの設定を間違えるとどうなりますか?
オーディオインターフェースは、アナログの音とデジタル信号とを変換するうえで重要なデバイスです。もしオーディオインターフェイスの設定を間違えていると、望んでいた音質が手に入らない、音ズレするなどの問題が起こり得ます。
編集ソフトやサンプリングレートコンバータを使ってサンプリングレートを変換することもできますが、音質が変わってしまうおそれがある点には、やはり注意が必要です。
Q: 動画編集では結局どのサンプリングレートを選べば良い?
迷ったら48kHz(48000Hz)を選びましょう。多くのプラットフォームで標準サンプリングレートとして採用されており、DVD、Blu-rayの作成時にもそのまま使えます。
48kHzのサンプリングレートで不満を覚えることはほとんどないとは思いますが、アナログ音源と比べてどこか物足りなさがある場合や、大がかりなミックス・編集が伴う音楽動画の場合は、96kHzなどのより高いサンプリングレートを検討してもよいかもしれません。
まとめ|自分の目的に合ったサンプリングレートを選ぼう
この記事では、最適な設定を迷いがちなサンプリングレートについて、くわしく説明してきました。
今では「迷ったら48kHz!」と言い切れるほど、48kHzのサンプリングレートはDVD、Blu-ray、各種動画プラットフォームといった幅広い場面で標準採用されています。動画編集ソフト「Filmora」なら、サンプリングレート48kHzがデフォルト設定されているので、難しいことを考えず、すぐに動画制作に取りかかれます。
ぜひ「Filmora」を使って、快適な動画編集を体験してみてくださいね。
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